Brimagaの「世界LEGO動向」では、世界中のレゴ(R)ファンがコミュニティに登録した「欲しいものリスト」を集計しています。その第1位は、最新の巨大セットでも、スター・ウォーズやハリー・ポッターのような人気IPでもありません。2007年に発売された、1階にカフェが入る街角の角地ビル ── モジュラービルディングの原点「カフェコーナー(#10182)」です。発売から20年近く経ったいまも、世界でいちばん欲しがられ続けています。なぜ、これほど古い1つのセットが王座を譲らないのでしょうか。

データが示す「ちょっとした異常事態」
世界の「欲しい」ランキングで、カフェコーナーの登録者は14,952人(Brimaga集計・Bricksetのコミュニティデータより。以下同じ)。ここまでなら「人気セット」で説明がつきます。目を引くのは所有者数のほうです。持っている人は8,043人。つまり 「欲しい人」が「持っている人」の約1.9倍 もいます。
これは意外とめずらしい状態です。ふつうのセットはこの逆になります。人気作ほど多くの人が実際に買って所有するので、「欲しい」は「持っている」を下回るのが自然。ところがカフェコーナーは、欲しい人が持っている人を大きく上回ったまま、長く止まっているのです。
「欲しい人 > 持っている人」になるモジュラーは、シリーズ初期の作品だけ。後から出た作品は、ほぼすべて「持っている > 欲しい」に逆転します。
モジュラービルディングという長寿シリーズの「原点」
モジュラービルディング(Modular Buildings)は、レゴ(R)の大人向けラインを代表する街並みシリーズです。1軒ずつが精巧な建物になっていて、上下に積んだり横に並べたりして自分の街を拡張できるのが魅力。カフェコーナーは、そのシリーズの記念すべき第1作(2007年)でした。1階にカフェ、上階にホテルが入る角地の建物で、以降ほぼ毎年1作ずつ追加され、2026年時点では21作を数える長寿シリーズに育っています。
つまりカフェコーナーは、単なる古い人気セットではありません。「すべてのモジュラーがここから始まった」という物語の起点そのものなのです。

渇望度で並べる ── 歴代モジュラーの「欲しい/持ってる」
各モジュラーの「欲しい」と「持ってる」を並べ、渇望度(欲しい ÷ 持ってる) を計算すると、シリーズの歴史がくっきり見えてきます。
| 作品 | 発売 | 欲しい | 持ってる | 渇望度 |
|---|---|---|---|---|
| カフェコーナー | 2007 | 14,952 | 8,043 | 1.86 |
| マーケットストリート | 2007 | 9,776 | 5,071 | 1.93 |
| グリーングローサー | 2008 | 14,753 | 9,827 | 1.50 |
| ファイアブリゲード | 2009 | 11,707 | 17,949 | 0.65 |
| グランドエンポリアム | 2010 | 11,509 | 21,351 | 0.54 |
| ペットショップ | 2011 | 9,320 | 27,691 | 0.34 |
| パリジャンレストラン | 2014 | 9,572 | 32,160 | 0.30 |
| アセンブリースクエア | 2017 | 7,650 | 30,964 | 0.25 |
渇望度が1を超える(欲しい人のほうが多い)のは、初期3作=カフェコーナー・マーケットストリート・グリーングローサーだけ。2009年のファイアブリゲード以降はすべて1を割り込み、新しくなるほど「みんな持っている」状態に近づきます。
渇望度の数字だけなら、同じ2007年のマーケットストリート(1.93)がわずかに上。ただし「欲しい」の絶対数ではカフェコーナー(14,952人)がシリーズ全体の頂点で、"世界がいちばん欲しがるモジュラー"の座はカフェコーナーが握っています。
なぜ20年近くも欲しがられ続けるのか
理由は大きく3つに整理できます。
- 希少性 ── 初期モジュラーは生産数が今ほど多くなく、きれいな状態で残っている数も限られます。時間とともに市場から消え、手に入りにくくなりました。
- 「起点」であることの象徴性 ── モジュラーを集めるコレクターにとって、第1作を持つことには特別な意味があります。「シリーズの最初の1軒」は、いくら後発の名作が出ても代わりがききません。
- コンプリート欲 ── 全作そろえたいコレクターほど、最後まで埋まらないのが最初期の高額作。「欲しいリストに入れたまま、なかなか買えない」という状態が積み上がっていきます。

対照的に、シリーズ10周年記念の大型作アセンブリースクエア(#10255・2017年・4,000ピース超)は「持ってる」が3万人を超え、渇望度は0.25。名作であっても、流通量が多く入手しやすい作品は「欲しい」に積み上がりにくいのです。この対比こそ、カフェコーナーの特別さを物語っています。
プレミア相場の現実 ── 新品なら定価の20倍という世界
ここで「渇望度」と相場はひとつにつながります。初期作は現存数が少なく二次流通価格が高いため、「欲しいけれど、その値段では手が出ない」層がウィッシュリストに滞留し続ける ── 渇望度の高さは、そのまま相場の高さの裏返しでもあるのです。カフェコーナーの当時の定価は US$139.99(2007年)。2009年末に生産終了して以降、価格は大きく跳ね上がりました。状態によって価格は次のように分かれます。
| 状態 | 海外二次流通の目安 |
|---|---|
| 新品・未開封 | US$3,000前後(定価の約20倍以上) |
| 中古・完品(箱・説明書つき) | US$2,500〜3,000前後 |
| バラ(箱・説明書なし) | US$700〜1,000前後 |
(※価格は海外マーケットBrickEconomy・BrickLink等の参考値で、時期や状態で大きく変動します。投資を勧めるものではありません。)
海外メディアBrick Fanaticsも、カフェコーナーを「最も価値の高いモジュラー」の筆頭として挙げています。日本国内では正規流通がとっくに終わっているため、入手はフリマ・オークション・並行輸入が中心。状態の良い箱付きほど価格差が大きく、"完品プレミア"がはっきり出るセットです。
高額な旧作は、箱・説明書・全パーツ・ミニフィグの有無で価格が数倍変わります。とくに初期モジュラーは細かなパーツ欠けが起きやすいので、二次流通で狙うなら「箱・説明書つきの完品か、それともバラか」を必ず確認を。相場は水物で、ここでの数字も断定ではありません。
コレクター視点:原点を追うか、いまの街から始めるか
では、いまカフェコーナーを追うべきなのでしょうか。レゴ(R)は基本的に旧作を再販しないため、価格が定価に戻ることは考えにくいとされます。原点にこだわるなら二次流通で「完品」を根気よく探すことになります。
一方で、モジュラーの楽しさは"街を育てること"にあります。いま現行で手に入る作品から始めるのも十分に王道です。たとえば自然史博物館(#10326)は本記事時点では現行ラインにあり(※生産終了の時期は変動します)、4,000ピース超の見応えある1軒。まずは今の街を1軒建て、そこからシリーズを遡っていくほうが、無理なく長く楽しめるはずです。
世界がいちばん欲しがるレゴが、派手な宇宙船でも城でもなく、2007年生まれの小さなカフェだった ── この事実そのものが、レゴという趣味の奥行きを教えてくれます。あなたの「欲しいリスト」の一番上には、どのセットがありますか。






